日本酒Q&A - 基礎編
Q1.日本酒にはどんな種類があるのかな?
Answer.日本酒の酒質にて分類すると、吟醸酒・純米酒・本醸造酒と呼ばれる特定名称酒とそれ以外の普通酒の2つ大別されます。
- 吟醸酒・・・原料米の精米歩合を60%以下にして、米麹・水・醸造アルコールを原料として造られたもので、吟醸香と呼ばれる果実臭が特徴です。
- 純米酒・・・米麹・水を原料として醸造されたもの。醸造アルコールは一切添加しませんので、米の旨味を最大限に生かしたお酒です。従来は原料米の精米歩合は70%以下と定められておりましたが、酒税法の改正により規定はありません。
- 本醸造酒・・・原料米の精米歩合を70%以下にして、米麹・水・醸造アルコールを原料として醸造されたもの。
- 普通酒・・・吟醸酒・純米酒・本醸造酒に属さない日本酒。一般的にメーカー独自で特撰・上撰・佳撰などと銘うっているものやパック酒・カップ酒などがあたります。
特定名称酒の表示について
特定名称 | 使用原料 | 精米歩合 | 麹米使用割合 |
---|---|---|---|
吟醸酒 | 米・米麹・醸造アルコール・水 | 60%以下 | 15%以上 |
大吟醸酒 | 米・米麹・醸造アルコール・水 | 50%以下 | 15%以上 |
純米酒 | 米・米麹・水 | ※酒税法改正で規定なし | 15%以上 |
純米吟醸酒 | 米・米麹・水 | 60%以下 | 15%以上 |
純米大吟醸酒 | 米・米麹・水 | 50%以下 | 15%以上 |
特別純米酒 | 米・米麹・水 | 60%以下又は特別な製造方法(要説明表示) | 15%以上 |
本醸造酒 | 米・米麹・醸造アルコール・水 | 70%以下 | 15%以上 |
特別本醸造酒 | 米・米麹・醸造アルコール・水 | 60%以下又は特別な製造方法(要説明表示) | 15%以上 |
Q2.日本酒度・酸度ってなんですか?
Answer.瓶の裏ラベルに日本酒度や酸度を書いてあるのを目にした方もいらっしゃるでしょう。日本酒度とは一言でいえば、酒の中のエキス分が多いか少ないかを表す指標です。その測定には日本酒度浮ひょうという比重計を使います。酒のエキス分はほとんどが糖分ですから、糖分が多い酒(甘い酒、濃い酒)は比重計の目盛ではマイナスを示し、糖分の少ない酒(辛い酒、サラリとした酒)はプラスを示します。つまり日本酒度+4の酒の方が日本酒度-3の酒よりも辛いということになります。日本酒度は酒の甘辛を知るための目安といえます。
次に酸度ですが、これは酒10mlを中和するのに必要な1/10規定の水酸化ナトリウム溶液のml数を表しています。日本酒の酸の主成分はコハク酸とリンゴ酸です。酸もまた、味覚の甘辛に影響を与えます。一般に日本酒度が同じ場合は、酸度が大きいほど辛く感じます。ただしあくまで日本酒度・酸度は指標であって酒そのものの味のすべてを説明するものではありません。あくまで自分の味覚を大切にお酒を楽しまれるのがいいかと思います。
Q3.昔の「特級」「一級」という級別はなくなったのですか?
Answer.日本酒は以前、酒税法の品質に基づく級別制度により「特級、1級、2級」に区別されておりましたが、平成4年3月31日に廃止となったためそれ以降は各メーカーにより級別に代わってお客様にお選びいただく際の目安の一つになるよう、ランク(特撰・上撰・佳撰など)付けを採用しております。
Q4.なぜ昔から兵庫県の灘地方では酒造りがさかんだったのですか?
Answer.兵庫県の酒造りのさかんな地域「灘五郷」は、兵庫県神戸市の東部から西宮市まで広い範囲に渡っています。この地方の酒造りが栄えた理由は、何といっても酒造りに適した自然環境に恵まれていたことです。その自然環境とは、冬になると六甲山から吹き降りる冷たい「六甲おろし」、酒米の王者「山田錦」、酒造りの名水「宮水」、そして磨きぬかれた「丹波・但馬杜氏」の技。これらに加え、江戸時代には港に近く日本酒を輸送するのに便利であったこともあり、「灘酒」は全国的な銘柄となりました。
Q5.杜氏ってどんな人ですか?
Answer.日本酒醸造の技術者である「蔵人」をひとつにまとめあげるリーダーが「杜氏」です。醸造のすべてにおいての総責任者であり、日本酒の味わいも杜氏によって決まるといっても過言ではありません。杜氏は出身地ごとに流派的なものがあり、代表的なところでは、岩手県の「南部杜氏」、兵庫県の「但馬杜氏」などが知られております。ただし若手の日本酒離れも影響し、杜氏の後継者不足が顕著になってきております。メーカーによっては自社の社員が杜氏を兼ねている場合も増えてきました。
Q6.日本酒製造に使用される米は食用米とどう違うのですか?
Answer.大粒で粒の中心にデンプンの塊である「心白」と呼ばれる部分が多い軟質な米が一般的に日本酒造りに向くといわれています。そのなかでも特に向いているものを酒造好適米と呼びその代表格が山田錦と呼ばれるものです。昭和11年に人工交配にて改良された新品種で、その栽培には昼夜の寒暖差の激しい場所である棚田が適しているためその生産量はきわめて少なく高価なものです。
Q7.生酒ってどういうものですか?
Answer.通常、お酒は出荷までに2回の火入れを行いますが、1回も火入れを行っていない酒を生酒と呼び、最初の火入れを行わない酒を生貯蔵酒、最後の火入れを行わない酒を生詰め酒と呼びます。特に生酒は1回も火入れを行っていないので、できたての風味を味わえますが、酒質が変化しやすいので保存には注意が必要です。
Q8.TVコマーシャルでよく山廃仕込みって聞きますがどういう製造方法なのですか?
Answer.「山廃」とか「山廃仕込み」という名前で販売されている商品を目にされた方もいらしゃるかと思います。「山廃」とは「山卸廃止」の略です。古くから酒づくり職人・杜氏たちに伝えられた伝統的な醸造技術のひとつである酒母製造方法の名称です。かつては蒸米と麹と水を仕込んだ後、櫂棒という道具ですりつぶす「山卸」という作業を行っておりましたが、技術の向上によりこの「山卸」を廃止した仕込方法が考案され「山廃仕込み」と呼ぶようになりました。山廃仕込は空気中の乳酸菌などの微生物を取り込んで自然のままに培養・育成し、これらの微生物によって有害な雑菌を死滅させ、酵母の育成の環境を整えます。しかも目的を達成すると、これらの微生物は麹が生成した糖と乳酸菌自身が生成した乳酸によって消滅し、引き続き雑菌のいない環境で徐々に優良清酒酵母が大量に増殖・育成されるという、まさに自然の摂理にかなった培養方法です。
Q9.きき酒をするには訓練が必要ですか?
Answer.日本酒の評価基準には「香・色・味」の3つに分類され、その中でも味についての評価基準は「甘・酸・辛・苦・渋」の5つに大別されることが多いです。適正なきき酒は専門家でないと大変難しいといわれていますが、味や匂いをきき分ける能力は個人差があることが多いですが、日ごろの鍛錬により養うことができます。